独立を考えたときに、よく耳にするのがフリーランスと個人事業主です。
どちらかというと、フリーランスは自由に働く人をイメージし、個人事業主は会社経営をイメージしがちですが、本当のところ何が違うのでしょうか?
そこで今回は、独立を考えている方にぜひ知ってほしいフリーランスと個人事業主の違いについて解説します。
またフリーランスのメリット・デメリットについてもまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
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フリーランスと個人事業主の違いは、それぞれの言葉の定義の違いになります。
ここでは、それぞれの言葉の意味を詳しく解説します。
フリーランスとは
フリーランスとは、法人や団体と雇用関係を結ばず、個人で仕事を請け負う「働き方」を示す言葉です。
自分のスキルや専門技術を活かし、個人で仕事を受けるのであれば誰でもフリーランスを名乗ることができます。
フリーランスは働き方を示す言葉なので、個人・個人事業主・法人も含まれます。
個人事業主とは
個人事業主とは、税務署に開業届けを出し、個人で仕事を請け負う人の呼称です。
フリーランスと同じだと思われがちですが、個人事業主は「働き方」を示すのではなく、「税法上の区分」を指します。
税務署に開業届けを出して、個人事業主であることが認められると青色申告をすることができ、税の控除を受けられます。
なお、個人事業主は「税法上の区分」のため法人化したら、個人事業主ではなくなります。
フリーランスで仕事をするメリットはさまざまですが、主に次の3つが挙げられます。
・働く場所・時間が自由
・収入アップが期待できる
・仕事を選べる
それでは1つずつ見ていきましょう。
メリット1:働く場所・時間が自由
フリーランスは、働く場所や時間を自由に選ぶことができます。
会社員のように朝の通勤ラッシュに耐えることはありませんし、プライベートを拘束され、会社で残業するようなこともありません。
モバイルWi-Fiなどを使い、ネット環境を整えれば、旅行をしながら仕事をすることもできます。
また子どもの突然の病気や怪我で、学校や保育園から呼び出しがあってもすぐに駆けつけられるのも、フリーランスのメリットの1つ。
「子どもが小さいうちは傍にいてあげたい、けど働くことを諦めたくない」というパパ・ママにもおすすめな働き方です。
メリット2:収入アップが期待できる
会社員は会社の利益に大きく貢献しても、大幅に給与や賞与が上がることはありません。
中には、上司と折り合いが悪く「正当な評価がされずに給与が上がらない…」という会社員の方もいるのではないでしょうか。フリーランスの場合、仕事をすればするほど収入UPが期待できます。
とくにエンジニアやWebライターなど初期費用がほとんどかからない職種であれば、売上のほとんどが収入となります。
受注する仕事の数にもよりますが、多くの人は会社員の時よりも収入が高くなるでしょう。
メリット3:仕事を選べる
会社に所属していると、思わぬ異動や事業変更によってやりたくない仕事を任せられることがあります。
ただでさえ、会社の拘束時間が長いのにやりたくない仕事まで請け負わされるとストレスが溜まってしまいますよね。転職や独立を考えるきっかけにもなるでしょう。
フリーランスは、自分で営業して仕事を取る必要がありますが、好きな仕事だけを選ぶことができます。
月毎に案件数を変動させることもできますし、キャリアアップのために案件を選択することも自由です。
フリーランスは仕事を自由にできるという大きなメリットがありますが、もちろんデメリットもあります。
フリーランスで仕事をする3つのデメリットは次の通りです。
・仕事や収入が安定しない
・社会保険料が高くなる
・孤独を感じる
それでは、1つずつ見ていきましょう。
デメリット1:仕事や収入が安定しない
会社員の場合、職場に行けば当たり前のように仕事があり、与えられた仕事を遂行すれば確実に給料がもらえます。
フリーランスは、自分で営業して仕事を獲得する必要があります。もし仕事を獲得できなければ、収入はゼロ。厳しい生活が待っています。
また無事に継続案件を獲得できたとしても、業務委託契約している企業の業績悪化などで急に仕事がなくなることも。
さらに自身の体調不良などで思うように仕事を請け負えないとその分、報酬も下がってしまいます。
フリーランスは努力でいくらでも収入アップが期待できる一方で、やむを得ない事情などにより収入ダウンするリスクもあります。
デメリット2:社会保険料が高くなる
次の3つの社会保険は、会社員の場合、会社が半分負担する仕組みとなっています。
・厚生年金保険
・介護保険
フリーランスの場合、会社が半分負担してくれた社会保険料を全額負担しなければならないので、経済的負担が増えます。
またフリーランスになると社会保険の一部は次のように変わります。
・健康保険から国民健康保険
確定申告をすることにより、国民健康保険料は安くなりますが、傷病手当金や出産手当金がなくなってしまうのは大きなデメリットです。
デメリット3:孤独を感じる
会社員の場合、職場に行けば、同僚や上司と顔を合わせて働きます。
業務上のやり取りはもちろんのこと、仕事以外の世間話をすることもあるので、孤独を感じることは少ないでしょう。
フリーランスは基本的に1人で仕事を行うので、
今日は誰とも話さなかったな…
という日も珍しくありません。こういう日々が続いてしまうと、どうしても孤独を感じてしまうものです。
またフリーランスをしていくうえで、悩みが出てきたときに誰にも相談できないとなると、続けることが困難になってしまうことも。
煩わしい人間関係から抜け出すために、フリーランスになりたいと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかしフリーランスを長く続けるためには、TwitterやインスタなどのSNSを活用したり、同業種や異業種の集まりに参加したりするなど「孤独にならないための努力」が必要になります。
会社員からフリーランスになるのは、今すぐにでもできます。しかしながら、何の準備もないままフリーランスになるのは大変危険です。
ここからは会社員からフリーランスに転向する前に最低限しておくべき3つのことを紹介します。
・自分のキャリアやスキルを整理
・フリーランスになる前に副業をする
・クレジットカード作成とローン申請
それでは1つずつ詳しく見ていきましょう。
フリーランスはプロとして自分のスキルを顧客に提供する働き方です。
まずは自分のキャリアやスキルを紙に書きだして見える化しましょう。
・他人との差別化するための強みは何か
これらを明確にすると顧客も仕事を依頼しやすくなり、案件獲得に繋がります。
自分のスキルや強みがわかったら、会社を退職する前に副業でフリーランス体験をしましょう。
会社員を辞めて、収入ゼロからスタートを切るのも悪くはありませんが、あまりにもリスクが高すぎます。副業から始めれば、本業の収入があるので万が一、失敗しても生活が苦しくなるというようなことはありません。
またフリーランスで前職のスキルを活かせたとしても、最初はフリーランスとしての実績ゼロで、仕事を受注することになります。
そのため、最初はどうしても安価な案件や作業量の多い案件を受けざるを得ないことも。副業でこのような下積み期間を積んでおけば、いざ本業を辞めてフリーランスになっても、スムーズに業務を進めることができます。
その他にも副業をすることで、
・自己管理能力が鍛えられる
・案件獲得の方法を知ることができる
といったメリットがあります。
副業でさまざまな仕事を体験し、軌道に乗ってからフリーランスに転向しても決して遅くはありません。
フリーランスは、安定した給料をもらえる会社員と比べ、社会的信用が低い傾向があります。そのためクレジットカード会社の審査やローン審査が通りにくくなるのです。
もちろん事業が軌道に乗って、安定した収入を得られるようになれば、問題なく通るようになります。
しかし独立したてのフリーランスの場合、「安定した収入が臨めない」と判断されてしまうことも多く、新しいクレジットカード作成やローン申請が難しくなることが予想されます。
クレジットカードの申請や住宅・カーローン申請は、フリーランスになる前に済ませておくのがおすすめです。
2019年12月から日本に猛威を振るう新型コロナウイルスにより、2020年3月~4月にかけて全国に緊急事態宣言が出されました。
学校や保育園の休校、相次ぐ企業の倒産により、大打撃を受けたフリーランスの方も多かったのではないでしょうか。
そんなフリーランスを含む中小企業を営む人を金銭面でサポートするために、国は「持続化給付金」を支給する決定をしました。
持続化給付金の対象者や条件は次の通りです。
・対象者:中小法人等(医療法人、農業法人、NPO法人などを含む)、およびフリーランスを含む個人事業者など
・条件:2020年3月~5月までの売り上げが前年同月比で50%以上減少
・給付額:個人事業者等は最大100万円
2021年1月末で持続化給付金の申請は終了しています。
この他にも、新型コロナウイルス感染症蔓延による休校により、やむを得ず仕事を休んだ保護者の収入の一部を補償する「小学校休業等対応助成金」などの制度もありました。
「小学校休業等対応助成金」はフリーランスの保護者も対象です。
このように、新型コロナウイルス感染症による収入減の国の補償は、フリーランスも対象となっています。
このことから、フリーランスが働き方の1つとして認められつつあることがわかります。
フリーランスと個人事業主はいずれも、個人で事業を営む人を表します。しかし、フリーランスは「働き方」の呼称で個人事業主は「税制上の区分」を表す言葉なので、そもそも定義が違うのです。
また個人事業主の場合は、法人化したら税制上の区分が「法人」に変わります。
一方で、フリーランスは法人化しても呼称は変わりません。フリーランスと聞くと、働く場所や時間・そして仕事内容を自由に選べると思われがちです。
それは間違いではないのですが、自由に働くためには仕事を獲得し、プロとして業務を全うする必要があります。
そのため、実績を積み他人との差別化を図らなければ、生活することも難しいでしょう。フリーランスを目指す場合は、メリット・デメリットを把握した上で、しっかりと事前準備をしてから転向することをおすすめします。